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KINTOテクノロジーズ株式会社 様

世界共通のIDプラットフォームを構築し、ユーザー体験の向上を実現

KINTOテクノロジーズ株式会社

トヨタグループが全世界で展開する、新たな車のサブスクリプションサービス「KINTO」。すでにカーシェアリングの「KINTO SHARE」やマルチモーダル「my route」など6つのサービスが国内外で提供されています。 この「KINTO」をはじめ、トヨタグループのモビリティサービスをテクノロジーで支援する技術者集団が、KINTOテクノロジーズです。同社は、それまで国ごと、サービスごとに分散していたKINTOのユーザーIDを統合し、新たな認証基盤を2021年4月にリリースしました。ユーザー体験の向上を目的にスタートした統合プロジェクトにおいて、NRIセキュアテクノロジーズ(以下、NRIセキュア)は、ID管理やプライバシー領域の分野におけるアドバイザーとして支援しました。

今回のプロジェクトとNRIセキュアの支援について、KINTOテクノロジーズのグローバル開発グループ グループマネージャー 許峰氏と、同グループ 佐々木大氏に伺いました。

課題

  • ユーザーIDが国ごと、サービスごとに分散して管理され、理想的なユーザー体験を提供できていなかった
  • グローバル共通のID管理基盤を構築するには、セキュリティの確保のほかに、国・地域ごとに異なる認証レベルや個人情報保護法制に対応する必要があった

解決策

  • セキュリティとOpen ID Connectに精通した専門家が、アドバイザーとして参画
  • 利便性や事業スピードと、セキュリティのバランスを考慮しながら、課題ごとに採りうる選択肢を提示

効果

  • 2021年4月に「グローバル KINTO IDプラットフォーム」をリリースし、イタリアを皮切りに世界各国に展開
  • 既存のIDとパスワードで、他のサービスも利用できるようになり、ユーザー体験が向上

導入の背景や課題

国ごと、サービスごとに分散していたID管理。ユーザー体験向上に向けて統合を模索

int_5D4_0578左から、KINTOテクノロジーズの佐々木氏、許氏 

許氏「KINTOテクノロジーズは、国内外のKINTOサービスをテクノロジー面でサポートする役割を担っています。KINTOサービスをご利用いただくお客様の体験をベストなものにするには何が必要かを、各国の担当者と密に連携して考えながらプロダクト開発を進めています。 

KINTOは各国でスピーディにサービスを展開し、ブランドの認知度を高めてきました。一方でユーザーIDが分散し、国ごと、サービスごとにバラバラに管理される状態となり、サービスごとにログインし直す必要があるなど、理想的なユーザー体験を提供できているとは言えなかったのも事実でした。 

各国のKINTOのシニアマネジメント層が集まる場でも、『システムがばらばらで、顧客に提供するUI/UXもサービスごと、国ごとに異なるのは望ましい状態ではない』という意見が寄せられました。こうした声を受け、KINTOテクノロジーズではユーザー体験向上の解決策を模索し始めました。

ユーザーIDを統合するにあたり、アイデンティティ関連の動向を調査し、OpenID Connectという技術が使えそうだとわかってきました。しかし具体的にどう設計すればいいのか、実現するには自社開発がいいのか、それとも既存のソリューションを利用できるのかといった部分で悩んでいました」

選定のポイント 

セキュリティ会社がOpenID Connectもサポートできる点にアドバンテージ

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許氏「プロダクト開発やデータエンジニアリングなどについては経験豊富なエンジニアがそろっていますが、ID管理基盤、それもヨーロッパからアジア太平洋、南北アメリカに至るまで、グローバルに展開するID基盤の構築となると、専門家のアドバイスを仰ぐのが最適だと判断しました。 

まず参照したのが、OpenID技術の普及・啓蒙に取り組んでいる業界団体であるOpenIDファウンデーション・ジャパンのサイトでした。会員企業一覧を見て順にコンタクトを取り、コンサルティングサービスの可能性を打診していきました。その中にあったのが、NRIセキュアテクノロジーズでした。 

何社かの回答をいただきましたが、その中でNRIセキュアが一番フィットすると判断しました。というのも、サイバーセキュリティ分野全体に精通した知見を得たいという思いがあったからです。セキュリティのバックボーンを持つ企業が、OpenID Connectに関してもサポートできる点に大きなアドバンテージがあると感じました。 

また、サービスの利便性や事業展開のスピードとの適切なバランスについて助言が得られるかどうかも、ポイントでした。利便性は重要ですが、サービスを提供する以上、お客様の情報をしっかり守らなければなりません。それらの両方を担保するため、方策ごとにベネフィットと課題とを並べ、どのようにバランスを取っていくかのアドバイスを求めました」

導入の効果

確証を持てない部分はNRIセキュアから明確な回答を得て、プロジェクトを推進

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佐々木氏「我々は、NRIセキュアのアドバイスを受けながら独自のID管理基盤を開発し、2021年4月に『グローバル KINTO IDプラットフォーム(以下、GKIDP)』をリリースしました。拠点ごとに設けたユーザープールで、ユーザー情報の登録や認証処理を行い、『GKIDP Broker』を経由して他の拠点とつなげていく仕組みです。

最初につながったのはイタリアでした。それまでKINTO GO、KINTO ONE、KINTO SHAREといったサービスごとにバラバラに管理してきたIDを、イタリア向けのユーザープールへ移管して共通で管理するとともに、GKIDPに接続させました。既存のIDとパスワードでKINTOが提供する他のサービスにもログインできるようにしました。

続けて2021年9月には、ブラジルで個人向けのサブスクサービス「KINTO ONE Personal」の新規立ち上げに合わせ、同様にユーザープールを提供しました。続く11月にはタイにおいて、カーシェアサービス「KINTO SHARE」の開始にあたり、スマホアプリ『グローバルKINTOアプリ』とGKIDPをつなげました。さらに2022年10月には、カタールでのKINTOビジネスを立ち上げに伴い、予約システムなどのバックオフィスシステムとエンドユーザー向けのグローバルKINTOアプリ、そしてGKIDPを丸ごと提供しています。

許氏「国が違えば習慣も法規制も異なりますが、最初にリリースしたのはイタリアということもあり、GDPR対応は当初から念頭に置いてGKIDPの検討を進めました。自分たちでも調査しましたが、『どの情報が個人情報に当たるのか』『個人情報に当たるとしたら、どうやってリスクを最小限に抑えるのか』といった事柄をNRIセキュアにいろいろ質問し、アドバイスをいただきました。こうした支援を得ることで、GKIDP Brokerでの適正なデータ保持方法を設計できました。

時には、実現したい機能がそのまま実装できるのか、OpenID Connectの標準仕様を参照しても確証を持てない部分もありましたが、NRIセキュアから明確な回答を得ることができ、プロジェクトを推進することができました」

今後の展望

拡大していくGKIDPの進化を支えるブレーンとしてNRIセキュアに期待

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許氏「最近開催したグローバルKINTOミーティングにおいて、GKIDPをさらに展開し、すべてのKINTOサービスをつないでいく方針を表明しました。プラットフォームはつなげればつなげるほどネットワーク効果が生まれ、相乗効果でどんどん価値が高まっていくものです。

しかし、ID連携にはサービスごとにユーザー認証のレベルが異なっていたり、ID管理に必要な個人情報の粒度が異なるといったいろいろなバリアがあります。その違いをどのように吸収してシームレスに、かつ安全にサービスを提供できるかはとても難しいことだと考えています。

ID管理基盤の実装という狭い範囲にとどまらず、KINTOのサービスをどう広げていくかという戦略を考える上で、NRIセキュアの知見が非常に重要だと感じています。モビリティサービスの観点でGKIDPを進化させていく際の重要なブレーンとして引き続きNRIセキュアに期待しています。

※本文中の組織名、職名、概要図は2023年2月時点のものです。

支援チームの紹介

今回ご支援にあたったチームは、NRIセキュアのCIAMソリューション「Uni-ID Libra」を開発・導入支援するメンバーです。高速なビジネススピードで走り続けるKINTOテクノロジーズ様とのプロジェクトは、とてもチャレンジングでした。ID関連の標準技術に対する知見はもちろんのこと、ソリューション開発の経験に基づいて、システムを実装するための具体的な設計・技術課題やワークアラウンドを中心に支援させていただきました。今後も、様々なお客様のセキュアなID基盤の実現へ向けて、最適なソリューションを提案し支援していきます。