導入の背景
国内外におけるガバナンス実現のために、ユーザID管理、IdPとの連携が必須条件
石森 智雄氏 (株式会社クボタ グローバルICT本部 ICT推進第三部 KSインフラサービス室)
もともと、メールに添付できない大容量ファイルを社外パートナーと受け渡しする際、日本国内の多くの拠点では、自社開発したオンプレミスのファイル転送システムを利用していましたが、長きにわたって利用してきたことから、サーバーの老朽化が進み、メンテナンスを含めた今後の対応について検討する時期を迎えていました。
そこで、ハードウェアのメンテナンス、セキュリティリスクの高まり、グループ全体でのガバナンス強化に向けた海外拠点との利用システムの統一化といった複合的な課題を解決するために、SaaS型のファイル転送サービスへの変更を検討することになりました。検討にあたり必須条件としていたのは、海外拠点でも利用できるよう外国語に対応していること、グループ全体で利用しているユーザID管理システムおよびIdPとの連携機能があることでした。
当社はグループ全体の社員数が国内外で5万人以上になるため、ファイル転送サービスを利用するためにアカウント発行を都度行おうとすると、膨大な作業時間が発生します。また、入退社や人事異動、組織再編なども頻繁に発生しますので、入退社時にアカウントが自動的に作成・削除され、人事・組織情報と紐づけられること、かつシングルサインオンで使用できることが求められました。
選定のポイント
高いセキュリティレベルと従量課金制が決め手となり、クリプト便を採用
森田 清誠氏 (株式会社クボタ グローバルICT本部 ICT推進第三部 KSインフラサービス室)
いくつかのSaaS型のファイル転送サービスやオンラインストレージサービスを検討した結果、クリプト便に決めた理由の一つはセキュリティレベルの高さでした。クボタグループではSaaSの利用に際して、情報セキュリティや個人情報保護の観点から厳しい基準が設けられています。検討していたいくつかのファイル転送サービスについて、それらの基準を満たしているか一つ一つ確認を行いましたが、非機能要件などを総合的に判断してクリプト便に決めました。
クリプト便の料金体系も決め手の一つとなりました。多くのSaaS製品がユーザアカウント数ごとの課金体系であるのに対し、クリプト便は全体で送信したデータ量に応じた従量課金制です。当社の利用ケースとしては、メールに添付できない大容量ファイルの送信のみを想定していましたが、それだと必ず全員が使用するとは限りません。使用するかどうかわからない社員のアカウント登録ごとに利用費が発生すると、実際の利用の有無にかかわらず全体では膨大なコストになってしまいます。だからと言って、利用の度に申請~承認作業およびユーザの登録作業をするのも非効率的です。しかし、クリプト便ならユーザの事前登録に特別なコストは発生しませんので、予め自動でユーザ登録しておけて、社員が使用したい時には“申請作業不要ですぐ利用できる”状態を、低コストで実現できるという点も大きなポイントでした。
※ クリプト便では、ユーザ無制限プランをご用意しております。
導入の効果
優れたUIと豊富なチュートリアルによりスムーズに全社へ展開。運用負担も大幅減
導入前には、NRIセキュアから検証用のステージング環境を提供していただき、ユーザ自動プロビジョニングの実装を行いましたが、クリプト便は非常にシンプルな仕様なので、難解な設定は全く必要ありませんでした。社内の人事システムとクリプト便を連携するためのプログラムを社内事務局と開発部門で作成した後は、まずは以前から要望の多かった海外部門から展開し、そして国内へと展開を行っていきました。
通常、新たなシステムを社内に導入・展開する際には、ユーザ向けにしっかりとした説明資料を作成し、社内講習会を実施することもあります。しかし、クリプト便はメールソフトを使う感覚で直感的に迷わず使うことができるUIで、操作に関するヘルプやチュートリアルも用意されているため、非常にわかりやすく、当社側での事前準備は必要最低限に抑えることができました。利用ポリシーや簡単な使い方を説明する資料だけ作成して、国内外へ展開しましたが、導入後に発生したユーザからの問い合わせは、わずか10件程度でした。プロダクト選定時に重要視していたユーザID連携やセキュリティ面などのポイントはクリアしながら、導入~運用にかかる負担は、私たちの想定よりも大幅に軽減することができています。
今後の展望
月間8,000件の送信に利用するプラットフォームとして、組織情報とのAPI自動連携でさらなる活用へ
導入から半年以上が経過し、現在は国内外のクボタグループで全体のおよそ半数にあたる約2万人が利用するプラットフォームとなっています。クリプト便でのファイル送信数は月間合計約8,000件ほどですので、毎月全員が使用する訳ではありませんが、必要な時にすぐに使えて、安心してファイルを送信できる状態を実現できています。管理機能も非常に充実しているため、IT部門としても利用状況の把握も簡単で、送信量などの確認も非常にラクにできるようになりました。
現在はクリプト便で、2,500グループほどの組織を、人事情報と連携させて設定しています。ユーザの情報はAPI自動連携しているものの、これまでは組織情報(上長設定など)の取り込みにはRPAを使う必要がありました。しかし、直近のクリプト便のアップデートにより、組織情報とのAPI連携も可能になったそうですので、今後の組織変更時などに活用できるか検討し、より効率的な運用を実現していきたいと考えています。
※本文中の組織名、職名は2025年2月時点のものです