導入の背景や課題
グループ全体を見据えたセキュリティ体制強化と、外部脅威への備え
西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 情報セキュリティ室長 森 哲郎様
森氏:JR西日本グループでは、人・技術・組織の各側面から、多角的なセキュリティ強化に取り組んできました。最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し、その下部組織として「重要インフラ部会」と「JR西日本グループCSIRT(JRW-CSIRT)」を運営しています。現在では連結子会社を中心に約80社がJRW-CSIRTに参画しています。各部門・各社の窓口を担うCSIRTメンバー約550名に加え、現場を支えるサポートメンバー約2,100名が参加し、多くの社員を巻き込んだ組織へと発展しました。さらに、加盟会社の全役員・社員約5万人を対象に、セキュリティ教育や標的型攻撃メール訓練を継続的に実施し、グループ全体のセキュリティ成熟度はこの数年で着実に高まっています。一方で、2024年頃には、翌年に大阪・関西万博開催を控えていたため、社会的な注目の高まりに伴うサイバー攻撃リスクの増大に備えて、より高度な対策が必要だと感じていました。
鳥羽瀬氏:以前よりサーバーやネットワーク機器を対象とした脆弱性管理ツールによる監視は行っていましたが、検知対象は主にソフトウェアに限定されていました。世間では外部公開システムの設定ミス等によるインシデント事例も発生しており、ソフトウェア脆弱性以外の攻撃面についても対策を強化したいと考える一方で、ツールで検出される膨大な脆弱性の中から、対応の優先度や重要度を自社だけで判断することには限界があり、重大なリスクを見落としてしまわないかという不安も抱えていました。 さらに、自社Webサイトを模したフィッシングサイトや偽アプリの存在も確認されていたため、従来のような内部からの監視だけでなく、より広範な領域をカバーする対策を検討していました。
選定のポイント
ASMと脅威インテリジェンスを組み合わせた検出精度の高さが決め手に
西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 情報セキュリティ室 セキュリティ技術 鳥羽瀬 世宇氏
鳥羽瀬氏:そこで外部の知見を借りて自社の攻撃対象領域やリスクを把握するために、アタックサーフェスマネジメントを実施することを決め、複数のセキュリティ企業に声をかけました。各社とPoCを実施したところ、NRIセキュアから提出されたレポートは、当社の環境において「要対応」と判断される項目の絞り込みが適切で、精度の高さが際立っていました。脅威インテリジェンス情報と掛け合わせて評価されており、重要なポイントを確実に取りこぼさず指摘してくれるという信頼感に加え、ツールの提供だけでなく、専門家による継続的なサポートが受けられる点も高く評価し導入を決定しました。
森氏:PoCの際、ある程度の脆弱性が検出されることは想定していましたが、設定ミスによって本来公開すべきではないポートや検証用サイト、CMSの管理画面などが外部から閲覧可能な状態になっているケースなど、従来のソフトウェアを対象とした管理ツールでは把握しきれなかったリスクを浮き彫りにすることができました。 また、インターネット上で当社の名前を語ったなりすましサイト等が存在している実態も判明しました。直接的な情報漏洩ではなかったものの、さまざまなリスクを事実確認できたことで、脅威インテリジェンス分析とアタックサーフェスマネジメントを組み合わせて実施する重要性を改めて強く認識しました。
導入の効果
3カ月の改善サイクルによる脆弱性検知事項への対応を通じて、評価向上を達成

鳥羽瀬氏:脅威インテリジェンスサービスの導入にあたっても、公開情報をもとに診断を行う仕組みであるため、こちらで準備するのは対象となるドメインやIPアドレスのリストアップだけで済みました。現場に過度な負担をかけることなくスムーズに導入できたのは大きな利点です。 また、PoCの段階では想定していなかった新たな論点や課題についても、その都度NRIセキュアの皆さまに相談させていただいていますが、常に柔軟に対応いただいており、その点も非常に心強く感じています。
森氏:現在は、年1回のペースで対象サービスやドメインの棚卸しを行い、四半期ごとに診断を実施する運用を定着させています。脆弱性が検出された際は、緊急度の高いものは即時対応し、それ以外についても改善計画を策定して原則3カ月以内に対応するというサイクルを実施しています。 グループ全体では日々、新しいサイトやサービスが立ち上がり、未知の脆弱性も次々と発生するため、リスクを完全にゼロにすることは容易ではありません。しかし、こうした取り組みを継続的に行った結果、自社のセキュリティ対策状況を可視化するサービス「Secure SketCH」での評価結果も大きく向上させることができました。

今後の展望
脅威の自分事化により、「やらされ感」から主体的な取り組みへと変容

森氏:日々、脆弱性やサイバー攻撃に関する膨大な情報が入ってきますが、現場の担当者にとっては、それが自分たちの業務や組織にどう直結しているのかを具体的にイメージしにくい面がありました。その結果、これまではセキュリティ対応において、一方的な「やらされ感」や作業負担を感じる場面も少なくなかったと思います。しかし、今回の取り組みでは、現場が気付いていなかった自分たちのリスクや脆弱性をピンポイントで指摘してもらえるため、自分たちにとって有益な情報として受け止められているようです。実際のやり取りでも感謝や主体的な言動が増えており、非常に心強い変化だと感じています。現在は本件以外にも、セキュリティポリシーの見直しなど多岐にわたるテーマでNRIセキュアに相談しています。セキュリティに関する最も身近な相談役としてお力添えいただきながら、今後も継続的に連携を深めていきたいと考えています。
西日本旅客鉄道株式会社 稼農悠人氏 瀧本慎之佑氏 森哲郎氏 鳥羽瀬世宇氏 山田裕介氏
NRIセキュアテクノロジーズ 住友孝彰 森永修司
※本文中の組織名、職名は2026年1月時点のものです
