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セキュリティ用語解説

SIM3(Security Incident Management Maturity Model)

SIM3(Security Incident Management Maturity Model)は、CSIRT の成熟度を「組織・人材・ツール・プロセス」の 4 カテゴリ・計 45 項目で 0〜4 の 5 段階に定量評価するフレームワークです。各項目では“文書化されているか”と“経営層によるレビューが行われているか”が特に重視されます。2008 年に Open CSIRT Foundation が公開して以来、国際的な CSIRT コミュニティの“共通のものさし”として浸透しています。

近年では多くの組織が CSIRT を設置するなかで、運用フェーズにおいて「実効性をどう高めるか」「どこを優先的に強化すべきか」を客観的に測る指標が求められていることから注目度が一段と高まっています。また、FIRST への加盟や ENISA のナショナル CSIRT 基準といった国際的な枠組みでも成熟度のベースラインとして扱われる場面が増え、第三者による「SIM3 監査人」資格制度が整備・運用されています。

 

表:SIM3の各カテゴリ

カテゴリ

概要

項目数

組織

CSIRTの役割、権限など組織におけるCSIRTの位置づけが定義されているか。

11

人材

CSIRTメンバーに必要なスキルセットの定義や育成計画が定まっているか。

7

ツール

インシデントの防止、検知、管理等を実施するためのツールが導入されているか。

10

プロセス

インシデントに迅速に対応するための順序付けされた一連のアクションの流れを定めているか。

17


フレームワークの設問は、組織面での権限・サービスレベルの正式承認、人材面での必要スキルと育成計画、ツール面での検知から復旧までの一元化、プロセス面での法務・広報連携や経営報告ルートの整備など、経営と現場を結び付ける視点で構成されています。評価結果はレーダーチャートなどで可視化できるため、弱点の特定から改善ロードマップ策定までを一貫して支援します。最高レベルの「レベル 4」では定期的な経営層レビューが必須となり、セキュリティを経営課題として扱う文化を醸成する点も特徴です。

今後の課題としては、 評価項目のさらなる洗練とフレームワーク自体のアップデートへの円滑な対応、監査人資格者の拡充、そして業態や規模に応じた現実的な達成目標の設定が挙げられます。さらに SIM3 は成熟度診断に特化したモデルであるため、インシデント対応の指針を示す NIST SP 800-61 やサービス定義を整理した FIRST CSIRT Service Framework などと補完的に組み合わせ、全社的なガバナンス設計を行うことが望まれます。

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