はじめに
NRIセキュアテクノロジーズで、セキュリティコンサルタントをしている阿部と申します。2024年2月に勉強を開始し、5月までの約4カ月でAWSの認定資格を全て1発合格で取得しました。(ただし、2024年8月に追加されたベータ版のAI Practitioner -Foundational、Machine Learning Engineer -Associateは未取得です。2025 Japan AWS All Certifications Engineersの対象資格に含まれることが決まったため、来年の3月末までに取得する予定です。)
業務の合間に、4か月の短期間で全資格をどのように取得したのか、勉強方法や取り組み方について、ご紹介します。本ブログを読んでいただいている方の多くは、私と同じく本業に時間がとられている中で、効率的に資格取得できないか、と悩んでいる人だと考えています。今回の私の資格取得に向けた勉強の取り組み方や、そこから私が感じたことはきっと皆様の勉強に役立つものだと考えています。
私の経歴
大学時代は経済学を専攻しており、プログラミングや情報工学等については学んだことはありませんでした。大学卒業後、ネットワーク系エンジニアとして、主に金融系のネットワーク構築、運用を数年経験した後、弊社のセキュリティサービス部門に異動となり、SOC・マネージドセキュリティサービスの業務を約7年担当しました。
セキュリティサービス部門では、ルータ、スイッチ、負荷分散装置、Firewall、WAF(Web Application Firewall)等のネットワーク関連の機器を主に扱っていました。ただし、AWSの構築、運用の経験は約1年程度で、利用したAWSのサービスもごく一部です。
まずは勉強を習慣化させること
どんな教材でどのように勉強することよりも、まずは勉強を習慣化させることが一番大事です。
勉強を習慣化させるためのコツとして、①勉強する時間を決めておく、②毎日行う、のが効果的です。私は、平日は業務開始前の1時間と、休日は朝7時から1~2時間、夜21時から1時間学習するよう固定化しました。勉強する時間を決めずになんとなく空いた時間にやろうとしても、なかなか重たい腰が上がらないものです。まずは勉強できる時間を確保して、30分からでもいいので、毎日勉強するようにしましょう。2週間もすれば、自然と慣れてきます。1か月続けば、もう大丈夫です。
具体的な取り組み方
勉強の時間配分:インプット2割、アウトプット8割
①試験の対象サービスの概要を覚える
インプットは、AWSのサービス別資料であるBlackbeltを利用しました。受験する資格のシラバスを確認し、対象のサービスを勉強します。Blackbeltの勉強の仕方としては、最初は各サービスの機能の概要を覚えます。この時点では、記載されている内容を隅から隅まで覚える必要はないです。(例えば、DynamoDBであれば、DAX、Streams、TTL、NoSQL型など、用語の基本的な内容を覚える。)
インプットに時間をかけ過ぎるより、アウトプットによって知識の定着を図り、わからないところを少なくしていくことが、効率的です。私は、最初の受験の際に3週間ほどインプットに時間をかけたのですが、問題集を解いてみると、知らないことが多くて半分も回答できませんでした。その後、アウトプット中心の勉強に切り替えて全て1発合格することができました。
AWSの初心者で、Blackbeltの内容が難しい場合は、サービスの概要をコンパクトにまとめた市販のテキストを最初に通読するのがよいかと思います。
②毎日問題集を解き、新しい知識をメモにまとめる
アウトプットは、Udemy(オンライン学習プラットフォーム)の問題集や、Cloud License(Web問題集)を利用しましたが、いずれも問題の内容や解説に差異はないと感じました。私は、Cloud Licenseを2つ目の試験から利用しました。間違った問題や、お気に入りに登録した問題だけを抽出することが可能で、問題をランダムに抽出する模擬試験モードもあり、便利でした。
問題集を最初に解いた際に、Blackbeltに記載がない解説や、似たようなサービスの内容は個別にメモでまとめておき、日々チェックすると知識定着に効果的です。AWSのサービスは非常に多いため、それぞれの分野のサービス別にまとめるのがよいと思います。まとめるときは、綺麗に整理しようとはせず、ポイントを抜き出すぐらいがよいです。そのような作業に時間をかけるよりは、問題集を解くこと、作成したポイント集に目を通すことに時間を充てましょう。
また、AWSハンズオンで実際に手を動かして覚えることもお勧めです。
③AWS公式サイトやブログで苦手分野を確認する
毎日問題集を解いていると、自分の苦手な分野が見えてきます。余裕があれば、AWSのWhitepaperや規範ガイダンス、学習者のブログを参照して、苦手な分野の知識を補強することもよいです。問題集の正答率がコンスタントに8割を超えれば、合格できると思います。
お勧めの取得順序
取得順序のポイントは、①どの試験でも問われる汎用的なサービスを初めに学ぶ、②試験内容が重なる部分が多い試験の問題集を同時並行で解く、ことです。
最初にSolutions Architect – Associate(SAA)とSolutions Architect – Professional(SAP)を取得することをお勧めします。AWSの試験はサービス単体の知識を問うものではなく、セキュリティやコスト等の観点から複数のサービスを組み合わせた問題が出題されます。SAAとSAPは試験範囲が非常に広く難関とされており、どの資格でも問われる汎用的なサービス(例えば、CloudWatch、IAM、KMS、Organizations等)を網羅的に学習する必要があります。
私は、最初にSAPを取得しましたが、結果的に、他の資格の勉強時に新たに学習する量が少なくなり、効率的に勉強を進めることができました。試験内容が重なる部分が多いので、SAAとSAPの問題集を同時並行で解き進めると、効率的に進めることができると思います。
DevSecOps(情報システムにおいて、開発(Development)と運用(Operations)が密に連携することで、開発にかかる期間を短縮しリリース頻度を高める「DevOps」という開発スタイルに、セキュリティ(Security)も融合させることで、セキュリティを確保しつつ、開発スピードを損なわないスタイルのことを指します。)の考え方が、広く定着してきた中で、セキュリティの知識はどの分野、どの役職においても必要とされています。
SAA、SAPを取得した後は、AWS Certified Security – Specialty(SCS)を取得するのがよいと思います。SAA、SAPでもセキュリティに関連するサービスの知識は必要です。すでに学習した内容が多く、新たに覚える内容は多くないため、あまり時間をかけずに取得することができると思います。
その後は、プロビジョニング、運用、管理系の資格を取得するのがお勧めです。SAPを取得した際に、汎用的なサービスをすでに学習済であるため、SCS同様にあまり時間をかけずに取得することができると思います。AWS Certified SysOps Administrator – Associate、AWS Certified Developer – Associate、AWS Certified DevOps Engineer – Professionalの3つの資格は、試験内容が重なる部分が多いので、問題集を同時並行で解き進めると、効率的に進めることができると思います。
最後にネットワーク、データ分析、機械学習(関連資格であるAI Practitioner -Foundational、Machine Learning Engineer -Associateを先に取得することを推奨)の資格を取得するのが効率的であると思います。
短期集中
AWSは短期間でサービスが更新、追加がされるため、それに応じて試験の内容が変わることが想定されます。意欲があるうちに取得することをお勧めします。私は、最初に取得してから3か月で全ての資格を取得しました。
当初の予定では、全ての資格を取得する予定ではなかったので、私の取得順序はめちゃくちゃです。SAPを最初に取得していたことが功を奏して、資格を取得するにつれて、新たに学習する量が少なくなったため、この予定でも余裕を持って、受験することができました。SAP取得後の各資格の取得までの勉強時間は、それぞれ10~20時間程度でしたが、上記のお勧めの取得順序に沿って取り組めば、もう少し効率的に取得できたと思います。
各試験の受験履歴と感想
項番 |
試験名 |
バージョン |
受験日 |
難易度 |
感想 |
1 |
AWS Certified Solutions Architect - Professional |
SAP-C02 |
3/14 |
普通 |
試験内容は難しくないが、範囲が広い |
2 |
AWS Certified Security - Specialty |
SCS-C02 |
3/26 |
普通 |
|
3 |
AWS Certified DevOps Engineer - Professional |
DOP-C02 |
4/10 |
普通 |
|
4 |
AWS Certified Advanced Networking - Specialty |
ANS-C01 |
4/25 |
やや難 |
ネットワークの基礎知識が必要 |
5 |
AWS Certified Cloud Practitioner - Foundational |
CLF-C02 |
5/9 |
易 |
|
6 |
AWS Certified Machine Learning - Specialty |
MLS-C01 |
5/13 |
やや難 |
機械学習の基礎知識が必要 |
7 |
AWS Certified SysOps Administrator - Associate |
SOA-C02 |
5/16 |
普通 |
|
8 |
AWS Certified Developer - Associate |
DVA-C02 |
5/22 |
普通 |
|
9 |
AWS Certified Solutions Architect - Associate |
SAA-C03 |
5/28 |
普通 |
試験内容は難しくないが、範囲が広い |
10 |
AWS Certified Data Engineer - Associate |
DEA-C01 |
5/31 |
普通 |
各資格の難易度ですが、どの試験も重箱の隅を突くような問題はなく、基本的な知識で対応が可能です。ただし、AWS Certified Advanced Networking - Specialty、AWS Certified Machine Learning – Specialtyは、AWSのサービスの知識とは別に、それぞれの基礎知識が必要と感じました。ネットワークで言えば、サブネットマスク計算やステートレスとステートフルの違いといったレベルの内容であり、基礎中の基礎といった内容です。私は機械学習に馴染みがなかったので、G検定(一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施する、AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための検定試験。)の対策本を何度か通読しました。
コンプリート後の感想
AWSの試験は、セキュリティやコスト等の様々な観点から、ベストプラクティスを導き出せるかが問われる試験であり、単なる知識の詰め込みでは、到底太刀打ちはできません。試験を通じて、各サービスの仕様を理解できるだけではなく、どう組み合わせるのがベストなのか、ユースケースやサービス全体を体系的に学ぶことができると思います。
ただし、コンプリートしたからといって、AWSの技術力がすべて身に付いたわけではありません。わからないことがまだいっぱいあり、AWSはアップデートの頻度も多いので、実際に手を動かしてみることも含め、日々勉強が必要であると思います。
おわりに
AWSの資格を効率的に取得することにポイントを絞って、記事を作成しましたが、いかがだったでしょうか。本記事を読んでいただいた皆様にとって、AWSの資格取得の参考になり、チャレンジの後押しになれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。