導入の背景や課題
DX戦略の一環として、オムニチャネル化による顧客接点の改善に着手
電力・ガス自由化や再生可能エネルギー推進などエネルギー産業を取り巻く環境が激変する中、東京電力ホールディングスの一員であり、日本最大の小売電気事業者である東京電力エナジーパートナー(以下、東電EP)が注力しているのがデジタルトランスフォーメーション(DX)です。社長直下に置かれたDX推進室は、文字通りその推進役として、クラウドサービスに代表されるデジタル技術を生かしたオペレーションや業務の効率化に取り組んできました。
その一つの例がカスタマーサポート業務です。一人一人のお客さまに効率的にエネルギーを利用していただき、快適な生活をお届けするには顧客接点が重要になります。そこで、従来の電話対応が中心のコールセンターだけでなく、チャットをはじめ複数のチャネルを活用し、顧客からのさまざまな問い合わせに効率的に対応するオムニチャネル化を目指しました。
電話では待ち時間が長くなりがちなことに加え、お客さまのニーズも多様化しています。また、既存の基幹システムに改良を加えるだけでは、対応に当たるオペレーターの人件費削減につながる抜本的な改革は難しいという背景もありました。
電話だけではなく、多様なチャネルで同じようなサポートをスピーディに提供し、お客さまの利便性を向上させたいという狙いのもと、最新のAI技術を駆使し、オペレーター と協力することで負荷を減らせないかという仮説を立てて実証実験に取り組みました。
これらの環境を複数のクラウドサービスを使って構築をしたのですが、セキュリティをどのように担保していくかが課題となっていました。
選定のポイント
幅広い製品を取り扱うNRIセキュアならではの広範なサポート
東電EPは2019年からスモールスタートでNetskopeの導入を進めていきました。CASBとして各クラウドサービスへのアクセスの可視化と制御を行うと同時に、DLP機能を利用し、あらかじめ定めた分類に従って情報が扱われていることを確認しています。
短い期間でPoCを進めるなかで助かったのは、細かな設定項目や仕様などついて聞いた場合にも、NRIセキュアの担当者からの回答がとてもスムーズで、ストレスなくコミュニケーションを取れたことです。また、認証機能を提供するクラウドサービス「Okta」など、関連するソリューションに関する理解も深いことから、適切なサポートが得られたのも良かった点です。
Netskopeを選んだ理由としては、DLPを含めさまざまな機能が具備されており、セキュリティに関する課題をまとめて解決できる点があげられます。スピーディに機能の改善・追加がなされることも、クラウドサービスならではの利点だと評価しています。端末にエージェントを配布すればすぐに利用でき、導入がシンプルなところも非常に使い勝手の良さを感じます。
導入の効果
Netskopeなしには実現できなかったAIコンタクトセンター
AIコンタクトセンターの効果は、新型コロナウイルスの感染拡大によって図らずも実証されました。コロナ禍の影響でお客さまからの問い合わせが増加したことを受け、急遽、チャットベースの問い合わせ窓口を100ブース増やしました。以前ならば、場所や回線の用意など数ヶ月単位の時間がかかっていましたが、AIコンタクトセンターではすぐにブースを構えて柔軟に対応することができたのです。
そんなAIコンタクトセンターによるサポートのオムニチャネル化も、Netskopeがなければ実現できなかったでしょう。セキュリティを担保できなければクラウドサービスの利用は承認されず、AIコンタクトセンター構想そのものが幻に終わっていた可能性があるというわけです。
ただ、いくら優れたツールがあってもそれを支えるのは人間です。機械による検知・遮断に加え、何か異常を検知したらアラートを上げるという人間系の運用ルールを整備し、併用することによってはじめてセキュリティが保たれると思っています。
今後の展望
Netskopeを生かすことで在宅での問い合わせ対応やオムニチャネル化を進めていきたい
東電EPは今後、AIコンタクトセンターを運用フェーズへと進め、オペレーターが在宅で問い合わせに対応できる体制作りにも取り組んでいきます。契約関係をはじめとする制度面の整備も必要ですが、Netskopeを生かすことで在宅環境のセキュリティ確保も可能になると見込んでいます。
また、チャットに限らずメールやSNSなどさまざまなチャネルでの問い合わせ対応を実現し、コンタクトセンターの本格的なオムニチャネル化を進め、顧客によりよいサポート体験を提供していく方針です。さらに、分散してしまっているお客さまとの接点に関するデータを、包括的に分析し、改善サイクルを高速化したいと考えています。Netskopeによるセキュリティの下支えをベースに、さらなるサポート品質の向上に取り組んでいきます。
※本文中の組織名、職名、概要図は2022年10月時点のものです。