導入の背景や課題
社内に散在する大量の情報、ファイルをあちこち探し回ることも
畠中氏「当社のコーポレートステートメントは『美しさを拓く。Find Your Beauty』です。サロンや美容師に寄り添う姿勢を第一に、持続的な成長を遂げてきました。この30年余りさまざまなデジタル化を進めてきましたが、お客様志向のミルボンにとって第一のコミュニケーション手段は、「Face to Face」です。製品だけでなく美容全般に関するさまざまな情報、ミルボンの知的財産をサロンにお伝えし提案することで、ファンになってもらうことが営業活動の中心です。
しかしながら、対面営業をする際に必要な情報が社内に散在しており、お客様へ適切な情報を取り出すまでの効率が悪く、営業活動の質向上に課題が生じていました。あるものはファイルサーバに、またあるものはSharePoint OnlineやOneDrive、DVDなどに保存されているという具合で、何か一つ資料を使うにもあちこち探し回らなければなりませんでした。個人の業務用PCに保存されている場合もあり、『この情報はどこにあるんだろう?』と探し回ったあげく、自分のPCのローカルフォルダで見つかって、『ごめん、自分で持ってた』となる笑い話もあるほどでした。
データ容量もどんどん増えていました。今ではスマートフォンを用いて写真や動画を撮るのが当たり前です。お客様にイメージを伝えやすくなったのはいいのですが、ファイルサイズは以前と比べものにならないほど増えています。サーバ容量を拡張してもしばらくするとまた不足して、まるでいたちごっこでした。
さらに、情報の中には新製品の開発・テストや生産管理に関する機微なものも含まれます。情報の活用を促進しつつ、出してはならない情報は出ていかないようにコントロールし、かつ万一に備えてトレースできるようにしたくとも、あちこちに散在する状況では難しいと考えていました」
選定のポイント
容量や使う場所を気にせず、ガバナンスも効かせられるBoxを選択
岡崎氏「こうした背景から、デジタルコンテンツを一元的に管理する手法を模索し始めました。いくつか条件はありましたが、まず重視したのは容量の制限がなく、大量のデータを保存できることでした。ミルボンでは少しずつクラウド活用を開始し、ファイルサーバもクラウド上に構築していましたが、データが増えればその分ランニングコストが増加してしまいます。そうした懸念のないサービスであることが第一でした。
また、当社は国内だけでなく海外にも多くの拠点を持っています。このため、グローバルで利用でき、しかもガバナンスやセキュリティのコントロールが効くことも不可欠な条件でした。一定期間ログを保全でき、万一事故があった場合にはきちんとトレースできる必要がありました。オフィス内だけでなく社外からもアクセスできる環境を整えることもポイントでした。これらの要件を満たしたBoxを採用することに決定し、NRIセキュアテクノロジーズ(以下、NRIセキュア)の支援を受けて導入を進めました」
佐藤氏「導入決定の当時、私は営業部門に所属していましたが、折しも世の中がコロナ禍真っ只中で、ミルボンの生命線であるお客様訪問ができない状況でした。これまで対面でお見せしていたプレゼンテーション資料や動画を、オンラインで共有する場面が増えていきました。その際にファイルの受け渡しや検索がスムーズできずに、現場は困っていました」
岡崎氏「2020年から2021年にかけて検証を行い、どんな利用パターンがあるかを洗い出した上で、2022年3月にいよいよBoxの本格活用を開始しました。既存のファイルサーバやSharepoint上のデータを移行し、プロビジョニングツールを用いてユーザー情報も移行していきました。
移行に当たっては、たとえば入社、異動や退職といったユーザーのライフサイクルに沿ってどのようにアカウントを管理すべきか迷うところもありました。そんな時には、NRIセキュアの担当者から、人事イベント別にユーザ管理方法の例を教えてもらうなど選択肢を示してもらうことができ、我々にとっての最適な解を見出すまで伴走してくれました。また、Boxには様々な機能がありますが、日本語の説明が不十分なものもあり、NRIセキュアの担当者が私たちに適した形で情報を提供してくれたり、Box社に機能改善を働きかけたりしてくれて、助かりました」
導入の効果
ファイルサーバがなくなり、業務の改善・効率化が実現
岡崎氏「Boxの導入により、一部を除いて、2022年末にはファイルサーバの電源を落とすことができました。この結果、ストレージ容量不足の不安から解放されただけでなく、毎月の運用コストも削減できました。
また、以前は社外の方とはメールにパスワード付きZIPファイルを添付してファイルをやり取りしていましたが、その必要がなくなりました。メールに添付したファイルがBoxに保存され、アクセス用のURLとパスワードが相手に届く仕組みで、データのセキュリティが向上しました」
畠中氏「社長をはじめとする経営層も率先して活用しています。役員会議の資料もBoxに集約したので、会議の内容もすぐに社員に共有できるようになりました。これまでのように、複数のソースを探し回る必要も、専用の検索ツールに頼る必要もなくなりました。
現場でも、製品生成過程をスマートフォンで撮影し、その動画をそのまま共有して合否判定を行うといった具合に活用しています。これまでのファイルサーバではどう逆立ちしてもできなかったことが手軽にできるようになり、業務の改善につながっています」
佐藤氏「何より現場では、必要な情報をあちこち探して回る時間がなくなり、業務が効率化できています。その結果、必要に応じて編集を加えながら柔軟に情報を受け渡し、『お客様に寄り添って必要としている情報を届ける』『よりよい製品を作る』というミッションに一層力を注げるようになりました。
ツールは入れるだけでは意味がなく、活用してもらってはじめて価値が生まれます。そのために、運用開始前に全従業員向けに基本的な使い方に関する説明会を、のべ40回ほど開催しました。2022年末からは、『Boxを深く使いこなすことでお客様の未来をどう変えていけるか』という観点での社内教育も開始し、利活用を促進しています。また、ヘルプデスクも活用して細かくアフターフォローを行っています」
今後の展望
グローバルでも情報管理を一元化し、ミルボン流のコラボレーションを推進
佐藤氏「現在、Boxのアクティブユーザー数は購入したライセンス数の約7割を超え、今も順調に増え続けています。情報企画部では管理画面を通して常にBoxの利用状況を把握し、きちんと活用されているか、データの利活用が進んでいるかを確認しています。モノ作りに携わる開発本部、生産本部だけでなく、営業部隊であるFP本部でもさかんにデジタルコンテンツを活用できていることがうれしいポイントです」
岡崎氏「今後は、国内だけでなく国外の子会社でもBoxの利活用を広げ、グローバルでの情報管理も一元化していく計画です。また、社外の取引先やお客様とのやりとりについても、現場の要望を起点にしながら利活用の幅を広げていければと考えています」
畠中氏「気を付けたいのは、合理化をやりすぎると、当社が本来大切にしている『Face to Face』が疎かになることです。Boxは、社員の行動をチェックするためのツールというよりも、お客様のためにもっと情報を利活用していくための前向きなツールだととらえています。Boxを社員みんなが使いこなせるようになったら、社内外におけるコラボレーションがさらに生まれていくはずです。そのために、今後もBoxを積極的に活用していきたいと思います」
※本文中の組織名、職名、概要図は2023年3月時点のものです。