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スマートホームのセキュリティリスクとは?|サイバー犯罪の手口と対策を解説

目次

    スマートホームとサイバー犯罪

    はじめに

    スマートホーム技術の急速な普及に伴い、私たちの生活はより便利で効率的なものへと変革しています。スマートホームとは家庭内のさまざまなデバイスやシステムがインターネットに接続されて連携し、自動化やリモート制御を可能にする住宅環境のことを指します。

     

    例えば、スマート照明(電球)、スマートサーモスタット(エアコン)、スマートセキュリティシステム(監視カメラ、スマートロック、アラームシステムなど)、スマート家電(冷蔵庫、洗濯機、オーブン、空気清浄機、加湿器など)、スマートスピーカー(Amazon EchoGoogle Homeなど)、スマートセンサー(温度/湿度/人感/ドア・窓開閉などを検知するセンサー)、スマートプラグ/スイッチなどが代表的に挙げられます。

     

    これらのデバイスやシステムは、ユーザの生活パターンを学習して、エネルギー効率の最適化や日常のタスクの自動化を実現することで、快適な生活環境を提供することが可能です。

     

    しかし、このような利便性が高まる一方でスマートホームは新たなサイバー犯罪のターゲットとしても注目を集めています。スマートホームへの攻撃は住居の破損や生命財産につながる被害、また個人のプライバシーに直結する情報を扱うため、プライバシー侵害や監視行為といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。

     

    本レポートではスマートホームを狙うサイバー犯罪の種類と直面するセキュリティ上の課題について考察します。

    スマートホームを狙うサイバー犯罪の種類

    スマートホームを狙うサイバー犯罪は多岐にわたりますが、主な種類は下記になります。

    ランサムウェア攻撃

    ランサムウェアは、被害者のデバイスやネットワークを暗号化して、復旧のために身代金を要求するマルウェアの一種です。スマートホームデバイスへのランサムウェア攻撃は、スマートロックやスマートカメラの暗号化が挙げられます。攻撃者がスマートロックのファームウェアを暗号化して物理的に自宅に入れなくなるケース、監視カメラの映像や設定をロックしてアクセス制限するケースなどがあります。被害者はビットコインで身代金を支払うことを要求される可能性があります

    ボットネット攻撃

    ボットネットは、多数の感染したデバイス(ボット)が遠隔操作されて、大規模なDDoS撃などに利用されます。スマートホームデバイスは脆弱なため、ボットネットの一部として乗っ取られて踏み台として利用され、被害者が気づかないうちに家庭内ネットワークが攻撃に利用される可能性があります。2016年にMiraiボットネットは脆弱なデフォルトパスワードが設定されている数多くのIoTデバイスを乗っ取りました。スマートカメラやルーターなどが感染して、大規模DDoS攻撃により世界中のインターネットサービスを停止させました

    プライバシー侵害

    スマートカメラやスマートスピーカーは、個人のプライバシーに直接関わる情報を扱うため不正アクセスされると、攻撃者がリアルタイムで家庭内の状況を盗み見されたり、会話を盗聴されたりするリスクがあります。スマートカメラの認証メカニズムを攻撃者が利用して、カメラが不正アクセスされ、家庭内の映像を不正にストリーミングされる可能性があります

    現在の対応状況と課題

    セキュリティ対策の普及

    多くのスマートホームデバイスメーカーは、セキュリティ強化に向けた取り組みを進めており、デフォルトパスワードの変更や、ファームウェアの自動更新、デバイス間の暗号化通信を推奨しています。しかし、実際にはユーザがこれらの対策を十分に行っていない場合が多く、セキュリティの穴が存在します。

    ユーザ教育の不足

    多くのユーザは、スマートホームデバイスのセキュリティリスクについて十分な知識を持っていません。また、専任のスマートホームデバイスの管理運用者が不在であり、セキュリティのベストプラクティスの理解不足や適切な設定を行わないことが、サイバー犯罪の成功率を高めています。

    規制と標準化の遅れ

    各国政府や国際機関は、IoTデバイスのセキュリティ基準を策定しつつありますが、統一された規格が確立されていません。そのためデバイスメーカー間でセキュリティ対策のばらつきが生じ、全体的なセキュリティレベルの向上が遅れています。

    まとめ

    スマートホームの普及は生活の利便性を飛躍的に向上させる一方で、新たなサイバー犯罪のターゲットとなっています。ランサムウェアやボットネット攻撃、プライバシー侵害などの脅威が存在し、その手法も高度化・多様化しています。

     

    これに対応するためにはデバイスメーカーのセキュリティ対策強化、ユーザ教育の推進、法的規制の整備、新たな攻撃手法に対応するために高度なセキュリティ技術の導入が不可欠です。

     

    スマートホームの安全性を確保し、サイバー犯罪のリスクを最低限に抑えるために、スマートホームに関わるデバイスメーカー、スマートホーム向けサービス事業者やスマートホーム向けデバイスを遠隔から管理運用する事業者、スマートホームを供給する事業者などすべての事業者、ユーザ、政策立案者が協力して包括的なセキュリティ戦略を構築することが求められます。

     

    ユーザは十分なセキュリティ機能がありソフトウェアアップデートなどにより品質や信頼性が維持されるIoTデバイスやサービスを選ぶこと、IoTデバイスやサービスの用途、用法を守り、必要に応じてメンテナンスやサポートを事業者に依頼することがスマートホームを安全に利用するために重要です。

     

    参考

    [1]一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)スマートホーム部会

    スマートホームの安心・安全に向けたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン

    https://home.jeita.or.jp/smarthome/pdf/security/guideline.pdf

    [2]IoT 推進コンソーシアム・総務省・経済産業省

    IoT セキュリティガイドライン

    https://www.soumu.go.jp/main_content/000428393.pdf

    [3]一般社団法人 重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)

    製品分野別セキュリティガイドライン スマートホーム編

    https://www.ccds.or.jp/public/document/other/CCDS製品分野別セキュリティガイドライン_スマートホーム編_Ver.1.0_2.pdf