セキュリティ用語解説|NRIセキュア

差分プライバシー(Differential Privacy)

作成者: NRI Secure|2025.04.11

差分プライバシー(Differential Privacy)は、個人のプライバシーを保護しながらデータを分析するための手法です。この技術は、データベース内の特定の個人情報を隠しつつ、全体の統計情報を収集・共有できるように設計されています。
具体的には、個人情報が含まれているか否かにかかわらず、分析結果が大きく変わらないように、ある個人のデータが含まれていてもいなくても結果に差が出ないように、確率的な分布に基づいたプライバシー予算と呼ばれるパラメータを調整することで、プライバシーを保護します。

近年、AI(人工知能)の発展に伴い、大量のデータを扱う機会が増えています。特に、企業や政府が集める大量のデータを活用する際に、個人情報の漏洩リスクや悪用の懸念が高まっていることから、差分プライバシーは注目を集めています。

 

差分プライバシーでは、プライバシー保護の目的に応じて、データの収集段階や分析結果の出力段階など、さまざまなタイミングでノイズを導入することで、個人の特定を困難にする技術が用いられます。
一方で、パラメータを小さく調整すると、プライバシー保護は強化されますがデータの精度が低下するリスクもあり、プライバシーとデータの精度はトレードオフの関係にあります。さらに、大規模データセットに適用する際の高い計算コスト、適切なパラメータの調整やアルゴリズムの選定が難しいなど、実用における課題も多いのが現状です。

 

差分プライバシーは、企業や研究機関が個人情報を保護しながらデータを活用するための強力な技術です。これにより、より多くのデータが安全に共有され、分析されることが期待されます。さらに、AI技術と組み合わせることで、個人情報のセキュリティを担保しつつ高精度なモデルの構築が可能となると予想され、差分プライバシーの普及が進むと考えられます。
差分プライバシーの技術は日々進化しており、効率的なアルゴリズムも開発されています。しかし、技術的課題や法整備、人材確保などの要因から、導入が容易になるには時間がかかると考えられているため、差分プライバシーの普及には多角的な取り組みが必要とされています。