昨今、新たな移動方法・技術として急激に注目が高まりつつあるモビリティサービスの「ロボットタクシー(RobotTaxi)」について皆さんご存じでしょうか。筆者らは先行してサービスの展開を進めているWaymo OneとZooxへ乗車するためアメリカを訪問しました。車両が自律的に判断しているとは思えないほどのスムーズな走行は筆者らの想像を大きく超えており、実用的かつ快適な移動体験を既に提供可能である時代に到達していることを実感しました。
一方、そのサービス提供の鍵となる技術は車両のセンサーや自動運転AI技術だけではありません。それらを含め、車両とクラウド連携のためのネットワークインフラ通信、遠隔監視、運用体制までを含めた総合的なエコシステムとして成り立っています。本記事ではロボットタクシーの試乗・視察によって得られた乗車体験を踏まえ、日本におけるロボットタクシー普及に向けた論点とポイントについて明らかにします。
現在最も事業として成功しており、社会実装が進んでいるのがWaymo[i]です。Waymoは既にアメリカの多くの拠点でサービス展開を進めており、その規模は随時拡大しています。旅行者でもスマートフォンアプリを通じて気軽に配車を依頼し、乗車できるようになっています。今回、我々はカリフォルニア州ロサンゼルスにて合計100km以上乗車することができました。
そして、サービスの商用展開を開始し、急速に知名度を高めつつあるのがAmazon子会社のZooxです[ii]。Zooxは2025年末にネバダ州ラスベガスとカリフォルニア州サンフランシスコでの有償一般サービス提供を開始しており、引き続きエリアの拡大を計画しています。2025年8月にラスベガスにおいて無償の乗車体験サービスを提供しており、筆者らはこちらに乗車することができました。実際ラスベガス市街地を歩いていると、多くのZoox車両を見ることができました。
また、2026年1月時点では限られたユーザーしか乗車できないものの、Tesla社のRobotaxi[iii]についても要注目です。現在はTesla Model Y車両を使用し、監督者が同乗し自動運転レベル2としてテキサス州オースティンなどの限定エリアで2025年6月から提供を開始しています。今後、Robotaxi専用のCybercabの投入を目標としていることに加え、将来は既存車両でもソフトウェアアップデートによってロボットタクシー機能が提供可能になるといった構想を掲げており、ロボットタクシー業界やモビリティサービスの在り方そのものに大きなインパクトを与えることが予想されます。
そもそもロボットタクシーとはどのようなサービスを指すのかを整理します。明確な定義はされていませんが、一般的には従来のタクシーのように乗降車場所について自由にユーザーが選択できる無人配車・運転サービスを指します。ロボットタクシーの乗車から降車後までのユーザー体験の流れを当社独自の観点で以下の通り整理しました。
ロボットタクシーでは、個人型タクシー配車サービスであるUber/Lyftと同様に専用のスマートフォンアプリを介して任意のポイントへ配車を依頼します。車両の到着後、スマートフォンアプリのBluetooth機能などを用いて車両を解錠し、乗車します。乗車後、シートベルトを締めるなどの準備を済ませ、目的地への走行を開始します。乗車中、想定外の緊急事態が発生した場合にはオペレーションセンターの担当者との通話や、カメラを介した状況確認が行われる場合があります。目的地到着後、降車と決済が行われます。降車後、一般的にユーザーは過去の乗車記録や決済履歴をスマートフォンアプリなどから確認できます。
このように、多少の乗降車位置の制限、ドアの解錠、緊急時の対応といったロボットタクシー特有のオペレーションはありつつも、基本的な流れは一般的なタクシーや、Uber/Lyftと変わりません。そのため、初めて使用するユーザーも気軽に利用することができます。
Waymo Oneの場合、今回筆者らが乗車したロサンゼルスではほぼ都市部全域でサービスが提供されており、最大で配車に20分弱かかる場合もありましたがすべて問題なく乗車することができました。移動にかかる時間や、費用についてもUber/Lyftとほぼ同じか数ドル安い場合が多く、チップを払う必要がない分、より安価に乗車することができました。またドライバーとの会話が不要な点についても、外国語が苦手な人にとって大きな魅力の一つです。そのためアメリカに居住している人はもちろん、外国人旅行者にとっても有力な移動手段の一つになっています。
ロボットタクシーは、これまで発展してきた自動運転技術や、コネクテッドカーのエコシステム、タクシー配車サービスなどの技術要素を組み合わせた総合的なサービスと言えます。特にロボットタクシー特有かつ重要な要素は、運行中における緊急時のユーザーの安全を確保する仕組みや、ロボットタクシー車両を維持・管理する仕組みです。以下の図に主なロボットタクシー車両のアーキテクチャと、関連する登場人物を整理しました。
ロボットタクシーは、自動運転レベル4による自動運転車両を用いた無人配車・移動サービスです。完全無人運転を実現するため、高性能なLiDARやミリ波レーダー、赤外線カメラといったセンサー類が搭載されています。さらに高精度3Dマップを使用し、適宜情報をサーバーとやり取りするための4G/5G通信ユニットも備えています。それらに加え、ユーザーへ快適な乗車体験を提供するため、ベース車両のIVI(インフォテインメント機器)のみでなく、後部座席向けに独自のタブレットを搭載しているケースが多いと考えられます。またユーザーに対してはスマートフォンアプリを提供しており、その配車予約や、ユーザーの管理、さらに履歴情報などの管理のためのサーバーが必要となります。
さらに、ロボットタクシーはその車両の管理も重要になります。例えばWaymo Oneでは、自動で駐車場(ベース)に戻ったのち、提携パートナー企業によって清掃および充電が行われています。さらに、緊急時に備え、一定数のスタッフはすぐに駆け付けられるように待機しています。
このようにロボットタクシーは様々な技術、多くの企業、人々によって実現されるサービスとなっています。そのため、各企業は多くの実証実験や、事前抽選等による限定的なサービス提供を数年かけて行い、情報収集と検証を行っています。
今回筆者らはカリフォルニア州ロサンゼルスでWaymo Oneへ、ネバダ州ラスベガスでZooxへ乗車してきました。それぞれのサービスはいずれも無人の車両が特定の場所から異なる特定の場所へ輸送するという同じコンセプトのロボットタクシーではあるものの、その外観や乗車体験にはそれぞれ異なる特長がありました。実際の乗車体験を踏まえ、それぞれの特長と今後の注目すべき動向について簡単に紹介します。
Googleの兄弟会社であるWaymoが提供するWaymo Oneの最大の特長は、アメリカ国内において最も多くの地域で商用サービスを展開していることです。そのサービス展開の速度は目覚ましく、無人運転による走行実績は加速度的に積み上がっています。2025年7月には1億マイルの自律走行を達成したと報道されており[iv]、その勢いは現在も続いています。実際にロサンゼルス市街地に入ると、1分に1回以上はWaymoが走行している様子を見ることができ、既に都市の日常風景として定着していることが分かりました。
Waymo Oneでは、EVであるJaguar I-PACEを独自にカスタマイズした車両を使用しています。そのため、車両外観は通常の車両とあまり変わりません。またEVのため停車中はもちろん走行中の車内空間は非常に静かです。一方で、ロサンゼルス市街地は通勤時間帯は道路上が混雑するためか、そのような時間帯にWaymoへ乗車すると、交通状況を踏まえて車線変更や裏道を活用するなど、可能な限り効率よく目的地に早く到着するような動きが見られました。
車両の配車は、基本的に独自のスマートフォンアプリを使用して行います。アプリは上図のようにUber/Lyftと同様の使用感となっており、サービス提供地域内において、配車時に乗車ポイントと降車ポイントを選択することが可能です。また、その他にもドアやトランクの解錠、車両到着時のホーン作動、車両本体上部のサイネージへのユーザーが設定したIDの表示といった一部の車両操作が可能となっています。さらに乗車中に車両で流れる音楽の操作や走行経路をリアルタイムで変更することも可能です。
Waymo One独自車両では、Jaguar I-PACEに標準で搭載されているIVIに加え、後部座席向けに独自のタブレットを搭載しています。ユーザーはこれらの機器を乗車中に自由に操作し、Waymoセレクトの音楽やSpotifyを介して自身の好きな音楽などを楽しめるほか、空調の操作や、緊急時のPull Over(途中停車)を指示したり、ヘルプセンターに接続したりすることができます。一般的なタクシーでは当たり前のドライバーがいないため、より個人的な空間を楽しみつつ目的地に移動できることが特長です。さらに、タブレット下部には充電用の高出力のType-Cポートを備えています。
このように、Waymo Oneではこれまでの多くの走行実績を踏まえ、ユーザーのニーズを踏まえた「細かいところに手が届く」工夫が感じられました。
Zooxは2018年12月にカリフォルニア州において自動運転による輸送サービスの認証を取得した最初の企業として一躍有名となりました。2025年8月からラスベガスにおいて一般ユーザー向けに無償の乗車体験サービスを提供しており、現在は2026年の商用サービス展開に向けて着実に情報収集を進めています。そのため、Waymo Oneと比べるとサービス展開の早さや、提供エリアはまだ限定的です。
その最大の特長は、誰が見てもロボットタクシーと感じるその外観です。”It’s not a car. It’s a robotaxi designed around you.”というコンセプトを掲げているZooxは、「ロボットタクシーだからこそ提供できる乗車体験」に着目しました。車両外観をよりロボットらしい見た目とするだけではなく、車両内部では移動中もリラックスして会話や音楽を楽しめる居心地の良い空間という特別な乗車体験を提供しています。そのためユーザーを運ぶための車両では独自設計車両を採用しており、既存のベース車両がありません。これはコンセプトカーのような独特な見た目の車両がそのまま市場に投入される珍しい例です。
実際にラスベガス市街地を試乗した際のフィーリングとしては、多少急停止する場面があったものの、全体的にスムーズであり、アトラクションに近い乗車体験でした。我々が試乗した際にたまたま走行トラブルが発生したものの、すべて遠隔で対応が行われ、ユーザーに不安を与えないような丁寧なやり取りがなされていたことも印象的でした。
車両外装に着目すると、車両上部の四隅には同じ形のセンサーユニットが搭載されていることに目が行きます。この四隅のセンサーユニットはいずれも同じものであり、一つのユニットに複数のカメラおよびセンサー類が搭載されています。同様のユニットを用いることで量産コストを抑えつつ、車両周辺の高精度なセンシングを実現する工夫がなされていると推測されます。
車両には2つの座席が向かい合うように設置されており、合計4人が乗車できるようになっています。各座席サイドには小型のタブレットが設置されており、ユーザーはこのタブレットを操作することで車内の音楽、空調の操作などが可能です。さらに、Pull Over(途中停車)やヘルプセンターとの接続もこのタブレットを介して行います。試乗時はユーザーのスマートフォンとの連携は不可であったものの、今後はそうした外部機器との接続による乗車体験の向上についても期待されます。
Zooxには実はWaymo Oneのような一般的な車両をベースとした車両もあります。本車両はトヨタハイランダーをベースとしており、情報収集専用として運用されています。情報収集用車両にはロボットタクシー車両と同様のセンサーユニットが搭載されており、同じようにセンシングして収集したデータを集約、分析することでサービス向上に役立てています。
本記事ではロボットタクシーの概要を紹介したうえで、アメリカにおいて最も注目度が高い2つのロボットタクシーサービスであるWaymo OneとZooxの視察結果を紹介しました。いずれも快適な移動体験であり、既にサービスが開始している地域では日常風景の一つとなっています。Waymoは広い提供エリアと洗練されたアプリ・車内UXで“実用的な移動手段”として定着しつつあり、Zooxは車両そのものを再設計することで“ロボットタクシーだからこそ”の体験価値を押し出しています。両者に共通するのは、無人であるがゆえに安全・運用・サポートがサービス品質の中核になる点です。今後、提供エリアの拡大とともに、車両・アプリ・遠隔支援まで含めた総合力が、ロボットタクシーの信頼と普及を左右していくと考えられます。
次の記事では、自動車セキュリティの専門家集団であるNDIASならではの観点から、ロボットタクシーを取り巻くサイバーセキュリティの脅威と対策について深掘りして考察します。実際にロボットタクシーで提供されているサービスや機能などから起きうるサイバー攻撃の脅威について整理し、今後増えてくるであろう事業者に向けた示唆を提示します。
NDIASではロボットタクシーを始めとする自動運転領域に関するサイバーセキュリティ対策についても最先端の情報収集を行っているほか、自動運転の実現に向けた調査を代表とした様々な取り組みを支援しています。自動運転領域におけるサイバーセキュリティに関する悩みをお持ちの方は、ぜひ私たちにご相談ください。
なお、本記事は記事執筆時点(2026年1月)の情報に基づいています。
[i] Waymo, https://waymo.com/
[ii] Zoox, https://zoox.com/
[iii]Tesla Q2 2025 Update – Robotaxi, https://www.tesla.com/sites/default/files/downloads/TSLA-Q2-2025-Update.pdf
[iv]Alphabet's Waymo picks up speed as Tesla robotaxi service expands