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Google Cloud Next 2026 現地レポート 前編|Agentic Enterprise時代のクラウド戦略と新発表まとめ

作成者: 大島 悠司|2026/05/26

2026年4月、ラスベガスで開催された「Google Cloud Next 2026」に初めて参加しました。世界中からクラウドエンジニアやビジネスリーダーが集まるイベントですが、今年は特に「Agentic AI」を中心とした発表が多く、会場全体が新しいクラウド×AI時代の到来を感じさせる熱気に包まれていました。

本ブログシリーズでは、現地で得た気づきやセッション内容を交えながら、Google Cloudが描く最新のクラウド戦略を前編・後編と2編にわたり紹介します。

本記事では、重要な新サービスやロードマップが発表されたDay1・Day2のキーノートを中心に、Googleが示した「エージェント時代」のビジョンを詳しく紹介します。


Google Cloud Nextとは

Google Cloud Nextは、Google Cloudが毎年開催するグローバルカンファレンスで、AI・データ・クラウド技術の最新動向を発表する場として世界中から注目されています。2026年は4月22日〜24日にラスベガスで開催され、Googleのクラウド戦略を象徴する多くの新サービスやロードマップが公開されました。

 

このイベントは、Google Cloudの方向性を最も包括的に知ることができる場であり、特に今年は「Agentic AI(エージェント型AI)」が中心テーマとなりました。Geminiを活用したエージェント基盤やデータ活用モデルなど、企業の業務プロセスを大きく変える発表が相次ぎ、会場全体が新しいクラウド時代の到来を感じさせる雰囲気に包まれていました。

 

2026年の現地参加数は約32,000人にものぼり、日本からの参加者は約1,000人とのことです。

 

会場はMandalay Bayという黄金色に輝く外観のリゾートホテルです。

 

Day1 キーノート―Agentic Enterpriseの全貌

キーノート会場はホテル併設のアリーナで行われます。90分前から並び、アリーナ席を確保することができました。


Day1のキーノートでは、Googleがどのようにエージェント中心のクラウドを構築していくのか、その全体像が示されました。冒頭で「The era of the pilot is over. The era of the agent is here.(実証の時代は終わり、エージェントの時代が来た)」と宣言され、AIを試験的に使う段階から、企業の中核に組み込む段階へ移行するというメッセージが強調されました。

Gemini Enterprise Agent Platform 

今回の発表の目玉となったのが「Gemini Enterprise Agent Platform」です。これは、企業がエージェントを作成→拡張→統制→最適化するための基盤を統合したプラットフォームとして発表されました。

以下のような、実運用を前提とした機能が多数盛り込まれています。

構築

Agent Deployment Kit

エージェントを素早く構築・デプロイするための開発キット

拡張

Agent Runtime
Agent Sessions
Agent Sandbox
Agent Memory Bank

エージェントを安定稼働させる実行基盤
エージェントとの対話やタスク実行の状態を管理
安全にエージェントを試験・検証できる隔離環境
エージェントが参照する長期・短期メモリを管理

統制

Agent Gateway

Agent Identity

Agent Registry

エージェント同士や外部システムとの接続を管理

エージェントごとの権限・認証情報を管理

エージェントの一覧・バージョン・設定を一元管理

最適化

Agent Evaluation

Agent Observability

エージェントの性能や品質を評価

エージェントの動作状況を可視化

また、Geminiだけでなく他社モデルも利用できる柔軟性を備えており、エージェントの性能を最大化するための選択肢が広がっている点も印象的でした。

 

そしてキーノートでは、以下の5つの要素から成るAIスタックをもとに、新発表が続きました。

AI Hypercomputer

Agentic Data Cloud

Agentic Defense

Agentic Platform and Models

Agentic Taskforce

AI Hypercomputer

AI時代のインフラとして、Googleは第8世代TPUを発表しました。TPU 8tは前世代比3倍の学習性能を持ち、TPU 8iは推論コストを大幅に削減するなど、企業がより大規模なモデルを低コストで扱えるようになることが期待されています。

 

Agentic Data Cloud

エージェントが正しく判断するためには、データの文脈理解が不可欠です。Googleはそのための基盤としてAgentic Data Cloudを発表しました。AWSやAzureのデータを移動せずに直接クエリできるCross-Cloud Lakehouseや、非構造化データから意味情報を抽出するKnowledge Catalogなど、データを「エージェントが理解できる知識」として扱うための仕組みが整備されています。


Agentic Defense

AIの導入が進むほどセキュリティの負荷は増大しますが、GoogleはWizとのパートナーシップにより、マルチクラウドのAIセキュリティ領域を強化する方向性を示しました。また、Threat Hunting agentやDetection Engineering agentが自律的に脅威を検知し、緩和する仕組みが紹介され、AIがAIを守るという新しいセキュリティモデルが提示されました。

Agentic Platform and Models

Googleが発表したエージェント開発の中核基盤で、Geminiモデルと統合されたエージェント実行環境を提供します。前述の「Gemini Enterprise Agent Platform」により、企業が大規模にエージェントを導入できるようになります。

Agentic Taskforce

Google社内で実際にエージェントを運用して得た知見をもとに、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)を改善するため、積極的にタスクを実行するエージェントです。Workspace Intelligenceは、Google Workspaceに統合されたAIエージェントであり、GoogleドライブやGmailなどのWorkspaceアプリを横断して情報を収集し、人の代わりにタスクを実行します。

  • 所感

    Googleがエージェント時代に向けて「セキュリティを前提にしたAI基盤」を本気で整備し始めたことが明確でした。特に、Agentic AIプラットフォームにガバナンス・権限管理・接続制御が標準で組み込まれている点は、エージェントを安全に本番運用するうえで不可欠だと感じました。また、Wiz統合を軸にしたAgentic Defenseは、AIがAIを守るという新しいセキュリティ対策を現実的なものにしており、クラウドセキュリティの運用が大きく変わる転換点になると受け止めました。

 

Day2 キーノート―使い方を示したDeveloper Keynote

Day1で様々な新機能が発表されたことに対し、Day2では新機能の使い方を徹底的に見せる内容でした。題材は、ラスベガスでマラソン大会を計画しシミュレーションするまでの流れを、AIエージェントで実施するというものです。デモは7つのフェーズで実施されたので紹介します。

Agent Platformでエージェントを作る

Day1で発表されたGemini Enterprise Agent Platformを使って、マラソンコースの計画を立てるプランナーエージェントを開発します。自然言語で要件を定義すると、すぐに作成されました。

マルチエージェントを作る

1つのエージェントでは難しい仕事を、複数のエージェントが分担して協力できるようにします。ここでは、プランナーエージェントのサブエージェントとして、交通への影響をシミュレーションするシミュレーションエージェントを作成します。エージェントはAgent Registryに登録されるため、他のエージェントの発見および通信を容易に行えます。

 

エージェントにメモリを持たせる

エージェントにセッションやメモリを持たせることで、過去の会話や作業内容を覚えておき、次の判断に生かせるようにします。

エージェントをデバッグする

開発中にバグが発覚したようなので、原因を突き止めていきます。デモではAgent Observabilityを使って、エージェントのトレース情報を調査することで原因を突き止めていました。また、MCP経由でGemini Cloud Assistを呼び出すことで、自然言語でバグの原因を突き止め、修正コードの提案もしてくれます。

 

Gemini Cloud Assistでインフラを自動で作る

ここではインフラの構築も自然言語で行います。自然言語でCloud Runで動いているエージェントをGKEに変換することができ、さらに、クラスターへのデプロイも行ってくれます。急なスケールにもすぐ対応することができ、インフラ構築・運用のハードルが大幅に下がることが分かります。

 

Agent Designer でエージェントを作る

ここでは、新たに物流周りを管理するサプライチェーンエージェントをノーコードで作成します。Agent Designerでは、既存の業務マニュアルを参照させ、自然言語で指示するだけでエージェントを作成でき、これまで作成したエージェントとシームレスに連携できます。

 

エージェントをセキュアにする

エージェントがアクセスできる情報や権限を細かく管理し、必要なところだけに接続できるようにします。これにより、誤った操作や不正アクセスを防ぎ、安全に運用できます。ここでは、Day1で発表されたAgent Registry、Agent Gateway、Agent Identityの活用によりエージェントの統制を図ることが説明されました。さらに、Wizによるリスク分析のデモも披露され、インターネットからどのような経路で機密情報に到達できてしまうかを可視化していました。

 

  • 所感

  • マラソン大会の計画という分かりやすい題材をもとに、ステップごとにデモが実施されており、新機能のイメージが容易につかめました。メモリ機能やマルチエージェントの統制の仕組みなど、実際の業務で役立つ機能がそろってきており、「エージェントを作るだけでなく、どう育てていくか」という視点が強く感じられました。エージェントが業務の中心に入る様子が見えてきた今、技術理解だけでなく、組織としての活用の準備を進めることが求められていると捉えています。

まとめ

前編では、Day1・Day2のキーノートを紹介しました。

Googleがエージェント時代に向けてクラウド基盤とAI活用の方法を一気に実用レベルまで引き上げていることを強く感じました。エージェントを作り、管理するための仕組みが整備され、AIが業務プロセス全体を最適化する未来が現実味を帯びていると感じました。

次回はセッションや会場の様子を紹介しますので、ご期待ください。