2025年12月にラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2025」に参加しました。本ブログシリーズでは、現地の様子やAWSの最新情報について、3回にわたり紹介します。本記事では、重要な新サービスやロードマップが発表されるキーノートを中心に紹介します。
AWS re:Inventとは、Amazon Web Services(AWS)が主催するクラウドコンピューティングに関する世界最大級の年次グローバルカンファレンスです。毎年、12月にラスベガスで開催されており、2025年は12月1日から5日まで開催されました。
本カンファレンスの特徴は以下の通りです。
2025年の現地参加数は約60,000人にものぼり、日本からの参加者は約1,900人とのことです。
会場は6つのホテルが中心になり、最北端のEncoreから最南端のMandalay Bayは約4kmあり、東京駅から田町駅ぐらいの距離感です。シャトルバスがあるものの、1つあたりの会場もとても広く、1日20,000歩を超えて歩くこともあります。
re:Inventには「5大キーノート」があり、AWSのトップエグゼクティブが登壇し、重要な新サービス発表やロードマップ、技術的な洞察、そして顧客事例を紹介する極めて重要なセッションです。AWSのロードマップを理解し、最新のクラウドトレンドに触れる上で欠かせない要素となっています。
本記事ではCEOのMatt氏とCTOのWerner氏のキーノートの重要なポイントを解説します。
Matt氏は最初にAWSの規模感を数字で説明しました。AWSは年間売上1,320億ドル、前年比20%成長という驚異的な数字を達成しました。S3は500兆オブジェクトを超え、AI・クラウド基盤の規模は世界最大級となります。また、38リージョン・120AZを展開し、光ファイバー網は地球と月を11往復できるほどの距離に達しました。
AIインフラに関する話になりました。まずは、AIワークロードの急増に対応するため、「AI Factories」を発表しました。これにより、顧客のデータセンターにAWSのAI専用インフラをプライベートリージョンとして展開可能になりました。そして、新しいハードウェアである「Trainium3 UltraServers」を発表しました。従来の4.4倍の計算能力と5倍の省電力性能を実現し、AIモデルのトレーニングと推論が劇的に効率化します。ステージ上には「Trainium3 UltraServers」が登場しました。
続いて、AIモデルに関する話に移ります。AIモデルAmazon Nova 2シリーズ(Lite/Pro/Sonic/Omni)を発表し、低コスト・高性能な推論やマルチモーダル対応を実現できるようになりました。さらに「Amazon Nova Forge」により、企業独自データを組み込んだ専用モデルが作成可能になり、精度と業務効率を飛躍的に向上することができます。
ちなみに、このNova Forgeを活用して日本の金融サービス向けLLMを構築したことで、NRIが高い評価を受けてロゴがキーノート中に表示されました。自社の取り組みがグローバルで評価されたことを、大変誇らしく感じました。
次はAIエージェントのアップデートの紹介です。Bedrock AgentCoreに「Policy」と「Evaluations」の機能を追加し、エージェントの安全性と品質を向上させました。そして、自律型AIエージェントの枠組みとして「Frontier Agents」を発表しました。自律性、スケーラビリティ、独立性に優れており、業務の効率化を支援します。
今回は、以下3つのエージェントが発表され、開発・セキュリティ・運用を自動化し、企業の生産性を大幅に高める仕組みが整いました。
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Kiro autonomous agent |
複数リポジトリを跨ぎながら開発タスクを遂行 |
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AWS Security Agent |
設計書とコードレビューからペネトレーションテストまでを遂行 |
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AWS DevOps Agent |
アラート検知後、自動でログ解析、原因特定、復旧策提案を遂行 |
ここまでAIに関するアップデートが中心でしたが、残り10分で25個のAI以外のアップデートを紹介するチャレンジが行われました。S3の最大オブジェクトサイズを50TBに拡大、Database Savings Plansによるコスト最適化が実現など、クラウドの基本価値である「スケーラビリティ」、「信頼性」、「コスト効率」をさらに強化するアップデートが次々と発表されました。時間ぴったりで紹介しきったのはさすがでした。
Werner氏は冒頭で、14年間続けたre:Inventキーノートへの登壇を今回で最後にすると宣言しました。「AWSには新しい声が必要だ」と語り、開発者コミュニティへの感謝を強調しました。そして、AI時代における開発者の役割を再定義し、「AIは仕事を奪うのではなく、進化する開発者をより重要にする」と力強く述べました。
Werner氏は、これからの開発者に必要な5つの資質を「ルネサンス・デベロッパー(Renaissance Developer)」として提唱しました。
講演ではこの5つについて、自身の体験を踏まえながらじっくりと説明してくれました。
Werner氏は博学者(is a polymath)の解説で、「AI時代は単一スキルだけでは不十分」と強調しました。理由は、AIやクラウドの進化により、システム全体を理解し、異なる領域を橋渡しできる能力がイノベーションを加速するからです。深い専門性は不可欠ですが、それだけでは複雑な課題を解決できません。幅広い知識を持つことで、技術とビジネスを結びつけ、より良い意思決定が可能になります。
そして、「単なるT型人材ではなく、ユニークなT型人材を目指すこと」を強調しました。これは、専門分野だけでなく、自分ならではの強みを持つT型人材という意味です。AI時代では、同じスキルを持つ人材が増える中で、差別化の鍵は「自分だけの専門性+広い視野」です。例えば、クラウドアーキテクトでありながらUXデザインに精通している、AIエンジニアでありながら倫理や法規制に詳しいなど、異なる分野を組み合わせることで唯一無二の価値を生み出せます。
Werner氏は「顧客はあなたの仕事の大半を目にしない。だが、見えない部分の品質と安定性こそがプロフェッショナルの誇りだ。あなたの仕事は価値がある。私は皆さんを誇りに思う。ありがとう」と述べました。そして「Werner out」と締めくくり、ステージを後にしました。 AWSの歴史を築いたCTOから、未来を担う開発者への力強いエールでした。
Part1では、CEOのMatt氏とCTOのWerner氏のキーノートを紹介しました。Matt氏のキーノートでは、AWSがAIとエージェント時代に向けてクラウド基盤を本気で進化させていることを強く感じました。Werner氏のキーノートでは、Renaissance Developerの5つの資質から、自分のキャリアを見直すきっかけになり、特にT型人材として深さと広さをどう磨くかを考えさせられました。
次回は新サービスとセッションをピックアップして紹介しますので、ご期待ください。